投稿日:2019.03.28 最終更新日:2024.06.12
保税地域および保税運送について解説!貨物の輸出入における保税地区について理解する。
物流において、通関や関税についての知識は大変重要な位置を占めます。輸出入に伴い、各国の定めにより関税が課されますが実は品物が入国してすぐに課税されるわけではありません。 一定期間、税金がかからない場所があるということをご存知ですか?それらは保税地域や自由貿易地域などと呼ばれています。貨物をスムーズに運び取引を円滑に行うために、今回は保税地域や保税運送について見てみましょう。
CONTENTS
保税とは
保税とは、輸入貨物について、輸入許可が下りるまで一定の期間課税が猶予されることを指します。また、その期間貨物は原則として保税地域という場所に置かれることになります。 本来保税とは、輸入貨物について言いますが、輸出貨物も通関にあたり保税地域に搬入することもあります。そのため、輸出入共に、保税地域が関わってくることになります。[br num=”2″] 国によっては、保税地域の他に、自由貿易地域(free trade zone)が設置されていることもあります。自由貿易地域は、一般的に保税地域よりも広い範囲が指定されることが多く、また交易促進のために発展途上国や国境地帯等でこうした地域が設けられてきています。
日本の保税地域
日本の保税地域には、5つの主な種別があります。蔵置物や場所、作業の目的などによって使い分けられています。指定保税地域と呼ばれるものは財務大臣の許可を必要とし、それ以外は税関長の許可により保税地域として認められます。 ここでは、日本の保税地域やそれに関わる施設等について見てゆきましょう。
指定保税地域
外国貨物の積卸、運搬、一時蔵置(搬入から1ヶ月以内)ができる場所として財務大臣により指定された地域を指します。
保税蔵置場
外国貨物の積卸、運搬、蔵置(搬入から3ヶ月以内)ができる場所として税関長により指定された場所を指します。なお、税関長の承認により外国貨物を承認の日から最大で2年間蔵置しておくことも可能となります。 物流センターや冷蔵・冷凍倉庫、穀物を保存するサイロなどがこの許可を受けることがあります。
保税工場
保税作業ができる場所として、税関長により許可された所を指します。なお、税関長の承認により、承認の日から2年間外国貨物を蔵置しておくことができます。保税作業は、移入承認を受けてから行わなくてはなりません。 実際には、製鋼所や製油所、食品工場などがこの許可を受けて製品の製造を行っています。[br num=”2″] 日本国内の保税工場は、加工貿易額の減少により縮小する傾向にありますが、外国にもこうした保税工場はあり、様々な活用がなされています。 ○ちなみに保税作業とは、外国貨物を原料とした製造(混合を含む)、内容の点検、改装(包装を交換すること)、仕分け、品物の手入れなど、定められた一定の作業に限られます。
保税展示場
外国貨物の展覧会場として使用できる場所として、税関長により許可された場所を保税展示場と言います。 高級車のモーターショーなどの会場となる国際展示場は、この許可を受けて開催されることが多く、保税展示場の代表的な例と言えます。また、美術館がこの指定を受けることもあり、この場合絵画作品などを保税されたまま一般に公開することができます。
総合保税地域
保税蔵置場、保税工場、保税展示場の全ての機能を有する場所を指します。税関長の承認により、承認の日から2年以内の外国貨物を蔵置しておくことができます。 港湾や空港の近辺にあたる場所が、実際に総合保税地域としての許可を受けています。
保税運送
国内のある保税地域から別の保税地域まで、外国貨物を保税状態のまま運送することを保税運送と言います。 こちらも税関長の許可が必要であり、運送期間も税関長によって定められます。 また、定められた運送期間内に貨物が目的地に到着しない場合、直ちに関税が課されることになっています。この場合の納税義務者は、輸入者ではなく保税運送の承認を受けた海貨業者となります。
海外の保税地域
海外でも日本と同様に、保税地域が定められています。種別や呼称は国によって異なりますが、輸出入の促進や手続きの利便性向上といった目的は共通しています。 例えばタイには、以下のような種類の保税地域(保税蔵置場)があります。 ・一般用保税蔵置場 ・製造品用保税蔵置場 ・船舶修理、工事用保税蔵置場 ・貯油用保税蔵置場 ・免税店タイプ保税蔵置場 ・自由貿易地域用保税蔵置場 ・免税品保管用保税蔵置場 なお、タイでこうした保税蔵置場において在庫所有や貨物管理をするためには、輸出または輸入業者としてタイに法人を設立する必要があります。そのため現実的には、外国企業がタイで保税蔵置場を利用する際は、現地に法人登録のある物流業者に委託することになります。
まとめ
今回は、保税地域について見てきました。輸出入に際して、保税地域は必ず利用する機会のある場所です。また、実際の保税地域について見てみると、日本や諸外国の貿易の実態が見えるのも面白いところです。 こうした知識を活かして、取引を活発に、またスムーズに行っていきたいですね。