投稿日:2025.03.21 最終更新日:2025.03.21
タイで存在感を増す中国メーカーと日本企業の今後 〜自動車・家電・物流のリアルな現場から〜

こんにちは、飯野です。
今日は、先日タイオフィスで行ったある面白い出来事をきっかけに、タイにおける自動車産業や物流業界の変化についてお話ししたいと思います。
昨日、日本からデジタル庁の方と某自動車メーカーの方が僕たちのバンコクオフィスにお越しくださり、「タイ市場における中国メーカーの影響」について、ざっくばらんに意見交換を行いました。
その際にお伝えした内容が、先方にとって非常に新鮮だったようで、「ぜひその話をもっと多くの人にシェアしてほしい」と言っていただいたので、今回はその内容をブログで共有させていただきます。
CONTENTS
タイ自動車市場の11年の変化
僕が11年前にタイに来た当時、道路にはトヨタ車とその他の日本車が圧倒的に多く走っていました。
ところが今では、BYDやテスラ、オラ(Ora)といった中国や欧米のEV車もかなり目にするようになりました。
この変化には驚かされます。
背景にあるのは、中国メーカーの積極的な進出です。特にBYDの勢いはすごくて、彼らの価格競争力とスピード感には本当に驚かされます。
僕自身も現地の自動車パーツメーカーの方々と話す中で、その勢いを肌で感じています。
自動車パーツ戦争と中国メーカーの台頭
中国のパーツメーカーがタイに進出してきたのは、2018年ごろ。コロナ前からの話です。
当初は「安かろう悪かろう」という印象で、日系メーカーはあまり気にしていなかったようですが、いつの間にかじわじわとシェアを奪ってきています。
家電業界にも似たような動きがありました。
パナソニックはタイから撤退し、ベトナムに拠点を移しました(2021年頃)。背景にあるのは、中国製パーツとの価格競争です。
僕の知人で、日系の家電パーツメーカーに勤めている方が、中国企業と話をしたときにこんなことを言われたそうです。
「中国は走ってる、日本は歩いている。」
まさにその通りだと思います。
中国企業は現地に送り込まれたら、結果を出すまでは帰れないという“片道切符”のような覚悟でやっています。
一方で、日本企業はどうしても慎重に進めがちで、その差が大きくなってきているんじゃないでしょうか。
ロジスティクス業界への影響と日系企業の課題
僕たちの会社も、タイで物流の仕事をしていますが、自動車関連のロジスティクスは昔から日系ティア1企業ががっちり抑えていて、なかなか入り込めない領域でした。
なので僕たちは、自動車以外のメーカーや工場の案件を中心に開拓してきました。
今となっては、それが功を奏した形になっていますが、タイ市場で日本車のシェアが減っていく中で、自動車一本足打法のフォワーダーは非常に厳しい状況にあると感じています。
特に、タイ国内販売向けの日本車が減っていることは、物流業者にとっても大きな影響があります。
ただ、日本向けや北米向けの完成車は今のところ安定しており、日本やアメリカでは中国EVの普及はそこまで進んでいないため、比較的守られている印象があります。
これからの戦い方と僕たちの取り組み
今後、僕たちは意図的に「日系企業だけ」を狙う戦略はとらず、海外フォワーダーとの連携を強め、ノミネーションを得ることで案件を取っていく動きを強化しています。
より広いマーケットで柔軟に動くための取り組みです。
現地で感じることや、業界関係者の声を聞いていると、今後も日系企業のシェアは少しずつ減っていく可能性が高いと感じています。
すでにスズキやスバルがタイ市場から撤退するなど、実際に動きが出ています。
食品輸入の話も少しだけ…
ちなみに昨日は、デジタル庁の方のあとにタイのJETROの方もお越しくださり、「日本の食品をどうやってタイに輸入するか」についてのご相談もいただきました。
聞いた話によると、JETROには年間500件以上、日本の食品輸出に関する問い合わせがあるそうです。
僕たちの会社でも食品の輸入に関するノウハウを持っていますので、ご興味のある自治体や企業の方がいらっしゃれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
食品の輸入には、ちょっとした“コツ”や専門的な知識が必要になる場面も多いです。
最後に
今回は、僕自身の現地での経験と、実際に聞いた話をベースに、タイ市場での中国メーカーの台頭と日系企業の変化についてお話しさせていただきました。
確かな統計データというよりは、僕の肌感覚と業界の現場の声から見えるリアルな話ですが、何かしらのヒントになればうれしいです。