投稿日:2025.03.19 最終更新日:2025.03.20
船会社のコンテナターミナルM&A戦略とフォワーダーのローカル戦略について

近年、コンテナターミナル事業に船会社が積極的に参入してきています。
特にMCやCMなどの船会社がコンテナターミナルの買収を進めており、ターミナル事業への投資が活発化しています。
もともとコンテナターミナル業界には、GTO(グローバルターミナルオペレーター)と呼ばれる事業者が存在していました。
代表的なGTOとしては、シンガポールのPSA、香港のHutchison Ports、中東のDPワールドなどが挙げられます。
しかし、近年は船会社系のグローバルターミナルオペレーターのシェアが拡大しています。
例えば、CMA CGMやCOSCOもグローバルターミナル事業を強化し、またHapagは昨年には「ハンザティック・グローバル・ターミナルズ」を立ち上げました。
船会社がコンテナターミナルに投資することで、自社船の運航においてさまざまなメリットを享受できるようになります。
CONTENTS
船会社がターミナルに投資するメリット
**自社船の優先対応が可能**
船会社がターミナルを保有することで、自社船の荷役を優先することができ、スケジュールの遵守率向上に寄与します。
**港湾混雑時の対応力向上**
ターミナルの混雑時に、自社船を優先的に入港させることが可能となり、スムーズなオペレーションが実現します。
**コンテナ船の大型化に対応**
現在、コンテナ船の大型化が進んでおり、それに対応できるターミナルの設備投資が不可欠です。船会社自らがターミナルに投資することで、適切なインフラを整備できます。
「Gemini」の戦略と定時遵守率向上への取り組み
最近のもう一つの注目点として、「Gemini」と呼ばれる新しいアライアンスの動きがあります。
これは、MaerskとHapag-Lloydの船社アライアンスで、定時遵守率90%以上を目標に掲げています。
従来のコンテナ船の定時到着率は50%〜66%程度と低い水準でしたが、Geminiでは戦略の一つとしてターミナルの情報を活用し、遅延リスクを事前に予測・回避することで高い定時到着率を目指しています。
例えば、ハブ港であるシンガポールや上海、ロッテルダムなどが混雑した際に、ターミナルオペレーターが事前に情報を共有し、別ルートを確保することで遅延を防ぐ仕組みです。
MSCはダイレクト便でスケジュール安定化へ
MSCは、船舶の保有数が世界最多であることを活かし、トランシップメントを減らしてダイレクトサービスを増やすことで、スケジュールの安定化を図っています。
船会社がターミナルを運営することで、このような柔軟な対応が可能になっています。
郵船ロジスティクスの通関業者買収と国内物流の重要性
別の海事新聞の記事によると、郵船ロジスティクスが広島の通関業者や倉庫業者を完全子会社化したとのニュースもありました。
船会社がグローバルな視点でアセットを保有し国際輸送を強化していく一方で、フォワーダーやロジスティクス会社は、国内ネットワークの強化が重要になっていると個人的には思います。
例えば、ヨーロッパの企業が日本の広島に貨物を送る際、広島国内でのハンドリングは非常に重要です。
船会社だけではカバーしきれない国内物流を、フォワーダーやロジスティクス会社が担うことで、よりシームレスな物流が可能になります。
これは日本に限った話ではなく、タイやインドネシアなどの新興国でも同様です。
現地の物流ネットワークに精通した企業が、適切な国内配送を手掛けることで、より効率的な物流体制が構築されます。
まとめ
今回の海事新聞の記事を通じて、以下のポイントが浮き彫りになりました。
船会社がコンテナターミナルに投資することで、自社船の運航を優先し、スケジュール管理を強化できる。
Geminiアライアンスは定時遵守率90%以上を目標に掲げ、ターミナル情報を活用したリスク回避を実施。
郵船ロジスティクスのように、フォワーダーやロジスティクス企業は国内物流の強化を進める必要がある。
今後も、船会社とフォワーダーの役割の違いが明確になり、それぞれの強みを活かした物流戦略が展開されていくと考えられます。
物流業界の最新動向を引き続き注目していきましょう!